相続で揉めないために! 円満な遺産分割のポイントを相続税の観点から解説

相続は、人生における大きなイベントの1つです。しかし、遺産分割を巡って家族間でトラブルが発生してしまうケースも少なくありません。

「相続で揉めないために、事前にどのような対策をしておけば良いの?」
「遺産分割協議をスムーズに進めるにはどうすれば良いの?」

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、相続で揉めないためのポイントを、相続税の観点から詳しく解説していきます。遺産分割協議を円満に進めるためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。

参考:【遺産相続】基礎知識から手続きの流れ、トラブル事例まで行政書士が徹底解説!

1. 相続発生前の準備が重要!3つのポイントで対策

相続が発生してから慌てて準備をするのではなく、事前にしっかりと対策をしておくことが、遺産分割を円満に進めるための鍵となります。相続発生前の準備として、特に重要なポイントを3つご紹介します。

1)遺言書の作成

遺言書は、被相続人(故人)の最終的な意思表示を記した、法的な効力を持つ重要な書類です。遺産をどのように分割したいか、誰にどの財産を相続させたいかなど、被相続人の具体的な希望を明確に記載しておくことで、相続発生後の遺産分割協議をスムーズに進めることができます。また、遺言書がない場合に比べて、相続人同士の解釈の違いや感情的な対立によるトラブルを大幅に減らす効果も期待できます。

遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、それぞれ作成方法や要件が異なります。ご自身の状況や希望に合わせて、適切な方法を選択しましょう。例えば、自筆証書遺言は費用を抑えて手軽に作成できますが、要件を満たしていないと無効になる可能性があります。一方、公正証書遺言は費用はかかりますが、公証役場で作成するため、形式的なミスがなく、より確実な遺言書を作成できます。

2)相続人への情報共有

相続財産の内容や、相続人それぞれの希望について、事前に家族間で話し合っておくことも重要です。相続発生後に初めて財産の内容を知るような状況では、相続人同士で不信感が生まれ、トラブルに発展しやすくなってしまいます。「誰が」「どの財産を」「どれくらい相続するのか」について、事前にある程度の共通認識を持っておくことで、相続発生後の遺産分割協議をスムーズに進めることができます。

具体的には、相続財産の種類やそれぞれの価値、負債の有無、相続人の人数やそれぞれの状況などを共有しましょう。また、相続人それぞれが、どの財産を相続したいか、どのような希望を持っているのかを話し合っておくことも大切です。

3)専門家への相談

相続に関する法律や税金は複雑で、専門的な知識が必要となる場合も多いです。弁護士や税理士などの専門家に相談することで、相続に関する疑問を解消し、個別の状況に応じた適切なアドバイスを受けることができます。

相続発生前に専門家へ相談しておくことで、後々のトラブルを回避できる可能性が高まります。例えば、遺産分割の方法によって相続税の負担額が大きく変わる可能性があるため、税理士に相談して最適な分割方法を検討することが重要です。また、遺言書の作成を検討している場合は、司法書士や行政書士に相談することで、法的に有効な遺言書を作成できます。

これらの準備をしておくことで、相続発生後の手続きをスムーズに進め、相続人同士が納得のいく遺産分割を実現できる可能性が高まります。


2. 遺産分割協議をスムーズに進めるための留意点

相続が発生し、いよいよ遺産分割協議を行う段階になったら、事前にしっかりと準備を行い、手続きをスムーズに進めることが重要です。協議を円滑に進めるためのポイントを3つ解説します。

1)相続財産の正確な把握

遺産分割協議の第一歩は、相続財産の全体像を正確に把握することです。「預貯金や不動産、株式」などのプラスの財産だけでなく、「借金や未払いの税金」などのマイナスの財産も含まれることを忘れずに、すべての財産を漏れなく洗い出す必要があります。

相続財産の調査方法としては「被相続人の自宅や保管場所を丁寧に確認する」「金融機関に照会して口座情報などを確認する」「法務局で不動産登記簿謄本を取得する」などがあります。また、故人が生前に作成した書類、例えば「預金通帳、株式の証券、不動産の権利証、借用書、税金の納付書」なども参考になるでしょう。

財産の把握が不十分なまま遺産分割協議を進めてしまうと、後から新たな財産が見つかった場合、再度協議をし直さなければならず、相続人同士のトラブルに発展する可能性もあります。

2)相続人全員の合意形成

遺産分割協議は、相続人全員の合意によって成立します。一部の相続人だけが有利になるような分割方法や、特定の相続人の意見を無視したような進め方では、不満を持つ相続人が出てしまい、協議が難航する可能性があります。

そのため、遺産分割協議では、相続人全員が納得できるような分割方法を検討することが重要です。それぞれの相続人の状況や希望を丁寧にヒアリングし、お互いに理解し合いながら、合意形成を目指しましょう。

もし、意見が対立する場合は、それぞれの主張の根拠や理由を明確にし、冷静に話し合うことが大切です。また、必要に応じて、弁護士や税理士などの専門家に意見を聞くことも有効です。

3)相続税の試算と考慮

遺産分割の方法によって、相続税の負担額が大きく変わる可能性があります。そのため、遺産分割協議を行う際には、事前に相続税の試算を行い、税負担を考慮した分割方法を検討することが重要です。

例えば、評価額の高い不動産を誰が相続するか、現金や預貯金をどのように分配するかなど、分割方法によって相続税額は大きく変動します。また配偶者の税額軽減小規模宅地の特例など、相続税には様々な特例制度があり、これらの制度を適切に活用することで相続税の負担を軽減できる可能性があります。

相続税の試算は複雑で専門的な知識が必要となるため、税理士に相談することをお勧めします。税理士は、相続財産の評価や相続税の計算、特例制度の適用などをサポートし、最適な遺産分割のアドバイスを提供してくれます。

参考:法務省「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」


3. 円満な遺産分割のための相続税対策3選

遺産分割協議を円満に進めるためには、相続税の負担を軽減することも重要な要素となります。相続税額が多額になると、相続人それぞれの取り分が減ってしまうだけでなく、納税資金の確保が難しくなり、遺産分割協議が難航する原因にもなりかねません。

相続税対策は、事前の準備が重要です。ここでは、主な相続税対策を3つご紹介します。

1)生前贈与の活用

生前に財産を贈与することで、相続開始時の財産を減らし、相続税の負担を軽減できます。年間110万円までの贈与であれば、贈与税がかからないため、計画的に贈与を行うことで効果的に相続税対策を進めることができます。

ただし、贈与税には、暦年課税制度の他に、相続時精算課税制度など、様々な制度があります。それぞれの制度の特徴やメリット・デメリットを理解した上で、ご自身の状況に合わせて適切な方法を選択することが重要です。

2)生命保険の活用

生命保険の死亡保険金は、受取人固有の財産となるため、遺産分割協議の対象外となります。また、一定の条件を満たせば、相続税の非課税枠を活用できます。

生命保険を活用することで、相続税の負担を軽減できるだけでなく、遺産分割の際に、相続人同士で揉めることなく、納税資金や生活資金を確保できるというメリットがあります。生命保険の種類や加入方法、非課税枠の適用条件などについては、専門家に相談することをお勧めします。

非課税枠=500万円×法定相続人

3)不動産の評価減

不動産は、相続財産の中でも特に評価額が高額になる傾向があります。そのため、不動産の評価額を下げることで、相続税の負担を大きく軽減できる可能性があります。

不動産の評価減には様々な方法があり、例えば配偶者が居住する場合は「配偶者居住権」を設定することで、評価額を最大2分の1まで減額できます。また、賃貸物件として貸し出す場合も、評価額が減額される特例があります。

その他にも、路線価や固定資産税評価額の見直しを請求する方法もあります。ただし、評価減には一定の要件や手続きが必要となるため、事前の専門家への相談がお勧めです。これらの相続税対策を組み合わせることで、より効果的に相続税の負担を軽減できます。


4. トラブルを避けるための注意点

遺産分割は、単なる財産の分配手続きではなく、相続人同士の人間関係に大きく影響するプロセスです。感情的な対立や不信感が生じると、協議が長期化し、最悪の場合、裁判に発展してしまう可能性もあります。

遺産分割において、特に注意すべき点を3つ挙げ、トラブルを未然に防ぐためのポイントを解説します。

1)財産の隠匿は厳禁

相続財産を故意に隠したり、虚偽の申告をしたりすることは、相続人同士の信頼関係を大きく損ない、遺産分割協議を著しく困難にする行為です。また、このような行為は、民法の規定に違反するだけでなく、場合によっては刑事罰の対象となる可能性もあります。

相続財産は、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含めて、すべて正確に申告することが重要です。もし、財産の把握に困る場合は、専門家へ相談し、適切なサポートを受けるようにしましょう。

2)感情的な対立を避ける

遺産分割協議は、冷静かつ客観的な視点で話し合いを進めることが重要です。感情的な対立や個人的な感情をぶつけ合うような状況では、建設的な議論ができず、協議が紛糾する原因となります。

もし、意見が対立する場合は、それぞれの主張の根拠や理由を明確にし、冷静に話し合うことが大切です。また、感情的になりそうな場合は、一度冷静になる時間を取り、落ち着いて話し合いを再開するのも有効な手段です。

3)必要に応じて調停制度の利用

遺産分割協議がどうしてもまとまらない場合は、家庭裁判所の調停制度を利用するという選択肢もあります。調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入り、中立的な立場で当事者間の合意形成を支援してくれます。

調停委員は、法律や税務の専門知識を持つだけでなく、豊富な経験に基づいたアドバイスや解決策を提示してくれるため、よりスムーズな合意形成が期待できます。

また、調停は、裁判と比べて費用が安く、手続きも簡便であるというメリットがあります。さらに、調停で成立した合意は、遺産分割協議の成立と同じ効力を持つため、後々のトラブルを防止する効果も期待できます。

遺産分割協議では、これらの注意点を心がけることで、トラブルを未然に防ぎ、相続人全員が納得できる円満な解決を目指しましょう。


5. 揉めない相続まとめ

相続は、誰にとっても避けては通れないライフイベントです。そして、遺産分割は、相続人同士の関係性や、それぞれの状況、相続財産の構成など、様々な要素が複雑に絡み合う、繊細なプロセスと言えます。本記事では、相続で揉めないために、円満な遺産分割を実現するためのポイントを、相続税の観点から解説しました。

相続は、家族の絆を深める良い機会となることもあれば、逆に、争いの火種となる可能性も秘めています。事前の準備と適切な対応によって、相続というプロセスを円満に乗り越え、未来へと繋がる良好な家族関係を築いていきましょう。

参考:遺産分割協議がまとまらない場合の「相続登記」はどうすればいい?相続人申告登記で対策可能です!


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