生産年齢人口の減少に伴い、日本では深刻な人手不足で頭を抱える業界も珍しくありません。
その筆頭である建設業は、若者から敬遠されており、慢性的な人手不足と高齢化がすすんでいます。
そこでこの記事では、「建設業界の人手不足の現状とその理由、そして慢性的な人手不足を解消するための各社の取り組み」などについて探ってみます。
建設業界の人手不足は深刻
最新の統計によると、建設業界の人手不足は深刻さがましており、厚生労働省の発表によると、2010年以降、建設業の就業者数は14.2%減少しています。
一方では新型コロナウイルス感染症も一段落して、建設業界の求人数は増え続けていますが、従業員不足のためにプロジェクトの数を減らさざるを得ない会社も増えてきています。
建設業界が人手不足に陥っている理由
建設業界の人手不足の、根本的な理由は「若者の流入が減っていること」と「人材が定着しないこと」の2点に集約されます。
1)建設業を志望する若者が少ない
建設業界が人手不足に陥っている最大の理由は、建設業を志望する若者が少ないということです。
若者が入ってこず、以前から建設業で働いていた中高年層だけが残って働いている状況です。その結果、建設業界では急激な高齢化がすすんでいます。
2)若者が定着しない
もう一つは、せっかく新卒や中途を採用しても、すぐに辞めてしまうということにあります。若者が定着しないかぎりは、建設業の人手不足が解消されることはありえません。
建設業で若者が減った原因
若者が就職を希望せず、かりに就職してもすぐに辞めてしまうには、当然原因があります。
1)3Kで魅力がない
建設業は3K(きつい、汚い、危険)と言われる業種です。ほとんどの仕事で肉体労働が必要できつく、ほこりや泥、汗にまみれる環境となることが多くなります。
さらに、電気ノコギリの使用、高所からの落下、地下作業などの危険にも直面する仕事です。そのため、建設業にはどうしても3Kのイメージがつきまとい、現代の若者からは敬遠される傾向にあります。
2)雇用環境がよくない
また、単純に給与や福利厚生に関しても、従業員にとって十分魅力的な条件が整っているとは言えません。
建設業界の多くの企業は、他の業界のような待遇を提供することができていません。このため、建設業に従事する人は、3Kに対して給与などの雇用条件が見合っていないと感じ、すぐに辞めてしまうのです。
建設業界の人手不足を解消するための取り組み
人手不足を解消するため、企業は人材確保の様々な施策を実施しています。
1)キャリアアップ制度などを導入
まず、若者が自分の能力を発揮し、成長できるように、ジョブローテーションや技術交流などの研修制度やキャリアアップ制度を導入する企業が出始めています。これにより、若者がこの業界に留まることを後押ししています。
2)雇用条件の改善
第二に、企業は給与の引き上げ、残業削減、短時間勤務など、魅力的な雇用条件を作ろうとしています。これは、若者を業界に引きつけると同時に、既存の従業員にも定着してもらうという2つの目的を持っています。
3)機械導入による3K解消
第三に、従業員の作業負担を軽減するための技術活用をおこなっています。労動者にとって危険な作業については、自動化施工技術やロボットの普及が進んでいます。これにより、従業員の負担が軽減され、より安全な労働環境を実現することができます。
また、ワークライフバランスへの取り組みも進んでいます。有給休暇や健康保険、住宅手当の支給など、安心して働ける環境を整備しています。これは、より良い労働環境を作り出し、若い人たちをこの業界に引きつけるのに役立っています。
建設業界の人手不足解消は若者がカギ
建設業界の人手不足の理由は、若者から敬遠され、仮に入ってきても定着しないことにあります。
その原因は、3K労働でありながら、労働条件もよくないことにあります。当然といえば当然な原因ですが、改善がされないまま放置されたことで、建設業界は慢性的な人手不足と急激な高齢化がすすんでしまいました。
これらの問題に対して、企業はキャリア形成や研修制度、魅力的な雇用条件、技術活用による作業負荷の軽減、ワークライフバランスへの取り組みなどの施策を実施して、改善を図っています。
これらの施策は、一朝一夕に実現できるものではありませんが、少しずつ若者にとって魅力的な産業へと変化しており、いずれは人手不足の解消につながる可能性があります。
国の政策としても、建設キャリアアップ制度や社会保険加入義務化など、さまざまな方面からおこなっています。
企業にとっての負担も大きいですが、国が制度を実施する際には補助金などのサポートもセットにしていることが多いので、情報を把握するようにしましょう。