【遺産相続】基礎知識から手続きの流れ、トラブル事例まで行政書士が徹底解説!

「相続」は、誰もが経験する可能性のある、人生の重要なイベントの1つですが「手続きや法律、税金」など複雑な要素が多く、不安や疑問を抱えている方は少なくありません。いざ相続に直面した際に、スムーズに対応できるよう、基本的な知識を身につけておくことが大切です。

この記事では、相続の基礎知識から、具体的な手続きの流れ、そして実際に起こりうるトラブル事例までをわかりやすく解説します。「遺産分割、相続税、遺言書」など、重要なキーワードを押さえながら、読者の皆様が抱える疑問を解消し、安心して相続にのぞめるよう徹底的にサポートいたします。

参考:相続とは?遺言や法的相続人、相続方法など基本的な手続きについて行政書士が解説します


1.遺産相続の基礎知識

遺産相続とは、人が亡くなった時(相続開始)に、その方の財産を遺族が引き継ぐことです。  故人(被相続人)の残した財産は「遺産」と呼ばれ、預貯金や不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。これらの遺産を誰がどのように受け継ぐのかは、法律で定められています。

1)相続人は誰になる? 法定相続人と相続順位

遺産を相続する権利を持つ人を「相続人」と言い、民法では相続人の範囲と順位が明確に定められており、これを「法定相続人」と呼びます。法定相続人は、以下の順番で決定されます。

参考:政府広報オンライン


①第一順位:配偶者と子

配偶者は常に相続人となります。子には、実子だけでなく養子も含まれます。


②第二順位:配偶者と父母

第一順位の相続人がいない場合、父母が相続人となります。


③第三順位:配偶者と兄弟姉妹

第一順位・第二順位の相続人がいない場合、兄弟姉妹が相続人となります。もし子が既に亡くなっている場合は、その子(被相続人から見ると孫)が「代襲相続人」として相続人になります。


2)相続分はどのように決まる? 法定相続分

相続人が複数いる場合、遺産をどのように分けるのかは、「法定相続分」によって定められています。基本的には、配偶者と子、父母、兄弟姉妹という相続順位と、それぞれの相続人の人数によって、相続分が決まります。

例えば、配偶者と子が2人いる場合は、配偶者が遺産の1/2を相続し、残りの1/2を子がそれぞれ1/4ずつ相続します。

ただし、遺言書が存在する場合は、遺言書の内容が法定相続分よりも優先されます。遺言書によって相続分を変更したり、特定の人に遺産を相続させたりすることが可能です。

相続は、誰にとっても身近な問題でありながら、複雑な法律や手続きが関わってきます。基本的な知識を理解しておくことが、スムーズな相続を実現するための第一歩と言えるでしょう。


参考:政府広報オンライン


2.遺産相続の手続きの流れ

相続は、被相続人が亡くなった瞬間から開始されます。その後、様々な手続きが必要となりますが、手続きには期限が定められているものもあるため、注意が必要です。ここでは、一般的な遺産相続の手続きの流れを段階的に解説します。

1)死亡届の提出

被相続人が亡くなったら、まずは7日以内に市区町村役場に死亡届を提出します。死亡届の提出によって、正式に死亡が確認され、後の手続きに進むことができます。

2)遺言書の有無の確認

被相続人が遺言書を残している場合は、その内容を確認します。遺言書には、遺産の分割方法や、特定の相続人の指定などが記載されている場合があります。遺言書がある場合は、その内容に従って相続手続きを進める必要がありますので、事前に有無を把握しておくことが重要です。

公正証書遺言であれば、公証役場で保管されているため、相続人は公証役場に問い合わせることで確認できます。

3)相続人の確定

遺言書がない場合は、民法で定められた法定相続人が相続人となります。相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や住民票などが必要となり、これらの書類を収集し、相続人の範囲を明確にします。

4)遺産の調査

相続人が確定したら、次に遺産の調査を行います。遺産には、プラスの財産(預貯金、不動産、株式など)とマイナスの財産(借金など)の両方が含まれます。

金融機関や法務局などに問い合わせ、被相続人の財産をすべて洗い出し、遺産目録を作成します。

5)遺産分割協議

相続人が複数いる場合は、遺産をどのように分けるかについて、相続人全員で話し合いを行います。これを「遺産分割協議」と言い、各相続人の相続分や、具体的な遺産の分け方などを決定します。

6)遺産分割協議書の作成

遺産分割協議が成立したら、その内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協議書は、遺産の分割内容を明確にし、後のトラブルを防止するために重要な書類です。

7)相続手続き

遺産分割協議書に基づき「預貯金の解約、不動産の名義変更(相続登記)、株式の名義変更」など各種の相続手続きを行います。これらの手続きには、それぞれ必要な書類や手続き方法が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

8)相続税の申告と納付

相続税の課税対象となる財産を相続した場合は、相続開始を知った日から10ヶ月以内に税務署に相続税の申告書を提出し、相続税を納付する必要があります。

遺産相続の手続きは、複雑で時間のかかるものですが、1つずつ着実に進めていくことが大切です。


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3.遺産相続で起こりうるトラブル事例

遺産相続は、感情的な問題や複雑な人間関係が絡み合い、様々なトラブルが発生しやすい状況と言えます。事前にトラブルになりやすい事例を知っておくことで、対策を講じることが可能になります。

1)遺産分割協議がまとまらない

最も多いトラブルの1つに、遺産分割協議がまとまらないというケースがあります。相続人それぞれ、遺産に対する考え方が異なるため、意見が対立し、協議が難航することがあります。

特に、相続財産に不動産が含まれている場合、その評価額や分割方法で揉めるケースが多く見られます。相続人の1人に浪費癖があったり、借金を抱えていたりする場合は、他の相続人から分配を拒否されることもあり、協議が難航する原因となります。

このような場合には、第三者である弁護士や司法書士などの専門家に間に入ってもらい、調停を行うことで解決を図ることが有効です。

2)遺言書の内容に不満がある

被相続人が遺言書を残していた場合でも、その内容によってはトラブルが発生することがあります。

例えば、遺言書の内容が法定相続分と大きく異なっていたり、特定の相続人に有利な内容であったりすると、他の相続人から不満が出ることがあります。また、遺言書が無効と判断される場合もあり、その場合は再び遺産分割協議を行う必要が生じます。

遺言書の内容に不満がある場合は、遺留分減殺請求という手段があります。遺留分とは相続人に最低限保障されている相続分のことで、遺言書によって遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求をすることで、本来受け取るべき相続分を請求することができます。

3)隠し子が現れる

被相続人に隠し子がいた場合、相続人が増えることになり、法定相続分が変化します。既存の相続人にとっては、想定外の相続人が現れたことによる動揺や、相続分が減ってしまうことへの不満が生じ、トラブルに発展する可能性があります。

隠し子も正当な相続人であるため、他の相続人と同等の権利を有します。そのため、隠し子が現れた場合は、改めて相続人を確定し、遺産分割協議を行う必要があります。

4)相続財産の使い込み

相続開始前に、一部の相続人が被相続人の預貯金などを使い込んでしまうケースがあります。これは、他の相続人に対する背信行為であり、深刻なトラブルに発展する可能性があります。

このような事態を防ぐためには、被相続人が生前に財産の管理状況を明確にしておくことや、信頼できる人に財産の管理を任せるなどの対策が必要です。

遺産相続は、金銭的な問題だけでなく、感情的な問題も絡み合い、複雑な様相を呈することがあります。トラブルを未然に防ぐためには、被相続人が生前に遺言書を作成しておくこと、相続人同士が事前に話し合いを行うことなどが重要です。また、トラブルが発生した場合には、早めに専門家に相談することが解決への近道となります。


4.トラブルを未然に防ぐための対策

遺産相続は、一度トラブルが発生してしまうと、解決までに長い時間と労力を要し、家族関係が悪化してしまうケースも少なくありません。そうした事態を避けるためには、生前からしっかりと対策を講じておくことが重要です。

1)遺言書の作成

遺言書は、被相続人の意思を明確に示すことができる最も有効な手段です。遺産の分割方法だけでなく、特定の相続人に特定の財産を相続させたい場合や、相続人以外の人に財産を遺したい場合にも、遺言書を作成しておくことで自身の希望を叶えることができます。

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自身の状況に合わせて適切な方法を選択しましょう。公正証書遺言は、公証役場で作成するため、法律の専門家である公証人が作成をサポートしてくれるだけでなく、原本が公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。

参考:【遺言の種類3選】自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のメリット・デメリットを行政書士が解説

2)生前贈与の活用

生前に財産を相続人に贈与しておくことも、相続トラブルを防止する有効な手段の1つです。生前贈与によって、相続財産を減らすことができるため、相続税の負担を軽減できる可能性があります。ただし、生前贈与には贈与税がかかる場合があるため、税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

また、贈与する際には、贈与契約書を作成し、贈与した財産の内容や贈与の目的などを明確に記録しておくことが重要です。

3)家族間の話し合い

相続について、家族間で事前に話し合っておくことも、トラブル防止に繋がります。遺産の分割方法や、それぞれの希望などを共有しておくことで、相続発生後の混乱や争いを避けることができます。

話し合いの際には、感情的にならず、冷静に話し合うことが大切です。また、必要に応じて、弁護士などの専門家に同席してもらうことも有効です。

4)専門家への相談

相続に関する知識や経験が不足している場合は、弁護士、税理士、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家は、相続に関する法律や手続き、税金について精通しており、適切なアドバイスやサポートを提供してくれます。

相続発生前に相談することで、トラブルを未然に防ぐための対策を講じることができ、また相続発生後に相談することで、スムーズな手続きを進めることができます。

遺産相続は、人生における大きなイベントであり、様々な問題が発生する可能性があります。しかし、事前の準備と適切な対応によって、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな相続を実現することが可能です。



5. 基礎知識の把握がスムーズな相続のポイントです

「相続」は、誰にとっても身近な問題でありながら、その複雑さから、多くの人が不安や疑問を抱えています。「遺産分割、相続税、遺言書作成」など様々な手続きや法律が関わってくるため、事前にしっかりと準備しておくことが重要です。

いざ相続が発生したときに、慌てずに適切な対応ができるよう、基礎知識を把握しておきましょう。この記事では、相続の基本的な知識から、具体的な手続きの流れ、そして起こりうるトラブル事例までをわかりやすく解説しました。相続にまつわる疑問を解消し、読者の皆様が安心して相続にのぞめる参考になれば幸いです。

  • この記事を書いた人
大阪府枚方市くずは行政書士おおむら法務事務所

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