日本政策金融公庫【記入例あり】創業計画書の8項目を記載するポイントについて解説

創業計画書は、起業時に融資を受ける際には、最も重要な書類の1つと言えます。しかし、「どのように書けば良いのか分からない」「何を書いたら良いのか分からない」という方も多いかもしれません。

そこで本記事では、創業計画書を書くための基本的な8項目のポイントについて解説します。起業目的やビジネスモデル、市場動向や競合状況、財務計画まで、創業計画書に必要な情報をまとめ、成功への道筋を描くために活用してみましょう。

創業計画書とは何か?

創業計画書(事業計画書)とは、ビジネスプランとも呼ばれ、事業の運営計画や財務計画を記載し、その目的をどのように達成するかを詳細に記した文書のことです。

事業を開始し運営するためのロードマップであり、投資家や銀行、その他の潜在的な利害関係者に対して、組織の成功に向けた説得力のある主張をまとめた計画書として機能します。

ビジネスプランは、公庫や銀行などの金融機関から資金を調達するために使われるだけでなく、ビジネスを計画し組織化するためのツールとしても機能することに留意する必要があります。そのため、ビジネスプランの内容は、事業計画の概要、会社の歴史、市場分析、競争環境、製品とサービスの説明、資金調達計画、業務の詳細、経営者の経歴などを多義にわたります。

計画書の目的と役割

ビジネスプランの目的は「組織の戦略を長期的に実行するためのプランを明確にすること、金融機関からの融資を確保すること、事業計画を他者と共有すること」の3つです。

事業計画は、経営者の頭の中で漠然と考えているだけでは、抜けや漏れも多く曖昧なままです。しかし、書面に書き出し「見える化」することによって、修正点や改善点が発見でき、段々とブラッシュアップされます。

さらに、長期的な経営計画として使用する場合、事業計画は事業の収益を増加させ、製品やサービスを拡大し新しい従業員を雇用し、将来の競争に備える方法についての指針を提供することになります。これは、事業の成長と資源利用を戦略的に最適化する方法についての指針を提供するため、事業運営にとって非常に重要です。

ビジネスプランの重要な構成要素のひとつに、財務プランがあります。財務計画には、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書などを含める必要があります。これらの計算書の目的は、事業の財務的健全性の詳細な概要と、将来の予測を提供することです。これらの情報は、事業の財務目標を達成する能力を評価し、銀行、投資家、その他の潜在的な資金提供者から資金を確保するために使用されます。

創業計画書の8つの必要項目

それでは、創業計画書(事業計画書)を作成するうえで必要な8項目について説明します。

参考:日本政策金融公庫「創業計画書の記入例(飲食業)」

1)創業の動機

「創業の動機」は融資担当者が最初に読む部分となり、事業を開始する理由や経緯、想い、具体的な計画や準備、周囲の理解を得た創業であることなどのエピソードをアピールできるとより好ましいです。

ただし、自身の熱い想いだけでなく、「世の中にどのような問題を解決する事業であるか」や「この事業によってどのように社会貢献するか」といった、事業のミッションや理念、目的が伝わるような内容にすることが重要です。

事業自体が社会に貢献することをアピールすることが、好印象を与える秘訣となります。

2)経営者の略歴等

以前の雇用経験や役職、達成した実績など、今回の新事業の成功に役立つ可能性がある過去の経験や、取得している資格や知的財産権について詳細に記述してください。

最も関連性の高い業務や獲得したスキルを明確に述べ、受賞歴などを含む事業遂行に有用なスキルを強調することが重要です。

事業開始の準備に過去のビジネス経験が役立つ場合は、必ず取り上げてください。つまずきの原因として挙げられる営業停止の経験でも、今回の事業創業で活用できるポイントがある場合は積極的にアピールするべきです。

店舗運営に関する資格を必ず書くことが重要です。創業計画において許可や認可を取得するため、最中であるならば、資格や認証を取得し始めていることを示しましょう。簿記などの経営に直結する資格も全て列挙しましょう。

3)取扱商品・サービス

①取扱商品・サービスの内容

製品やサービスの提供先、提供内容、提供方法について、わかりやすく説明します。ビジネスの本質を正確に伝えるため、専門用語を極力排除しましょう。

また、起業計画書では、矛盾がないように全項目に注意してください。ビジネス展開の根幹となる事業の詳細を具体的に記載することも重要です。

例として、ランチやディナー以外には、持ち帰り、デリバリー、オンライン販売などの方法があります。自社の優位性や同業他社との差別化を考慮することで、クリアなプランを示すことができます。

②セールスポイント

事業の計画書において、自社の特徴や強み、競合他社に対する優位性、そして取引先を確保できる具体的な根拠を明記することが望ましいです。これらのセールスポイントを加味し、自社の強みを最大限に活かすことが、事業の持続的な発展に必要となります。

特に、飲食店のコンセプトを描いた創業計画書を作成する際には、創業融資の審査において非常に重要なポイントとなります。

③販売ターゲット・販売戦略

自社が提供する商品やサービスを販売する際、明確なターゲット層を把握し、そのターゲットを認知させるために適切なマーケティング戦略を構築することが不可欠となります。具体的なマーケティング手法には、広告・広報・PRなどがあります。

この際、想定するターゲット層の属性や行動パターンに応じたマーケティング手法を策定し、どの程度の成果を目指すかの計画を立てることが重要です。これらが明確かつ具体的であるほど、より一層「しっかりと考えられた事業計画」の印象を与えることができます。

④競合・市場など企業を取り巻く状況

ビジネス展開市場の範囲と個別属性を述べます。進出対象市場が今後成長する見通しである場合、その要因に関して、具体的なデータに基づき、理由・根拠・実例・予測などを説明します。

競合会社の名称、ターゲットオーディエンス、提供商品、価格帯、特性、販売ポイントなどを一覧表にて提示することで、説得力を高めることができます。

4)取引先・取引関係等

ここでは、予定している主な販売先、仕入先、および外注先のシェア、掛取引割合、回収支払い条件、人件費の支払いについて記載します。

個人の販売先の場合は、決済方法ごとに細かく記載することが望ましいです。また、安定的かつ高品質な仕入先があることを強調してください。もし外注先が存在しない場合は、該当する箇所を空欄のままでかまいません。

5)従業員

法人の場合には当該法人の常勤役員数、3ヵ月以上の期間にわたって雇用されている従業員の数(創業時は予定者)、ならびに家族従業員やパートタイム従業員などの比率について、明確に記載します。

6)お借入の状況

創業者個人または代表者の、借入状況について「ビジネスローン、住宅ローン、車両またはオートバイのローン、教育ローン、カードローンなど」すべての融資に関する情報を詳細に開示していただく必要があります。漏れや秘匿は絶対に許されないことであり、すべての借入情報を含めた正確な情報の提供が不可欠です。

7)必要な資金と調達方法

創業計画書において、収支計画に次いで最も重要な項目の1つは、資金計画と調達方法の詳細な説明です。特に、飲食店の場合、運転資金の算出も重要であり、これらの情報を創業計画書にわかりやすくまとめる必要があります。この計画は、収支計画や「月次収支計算書」などの別紙と連携して、矛盾のない全体像を描くことが重要です。

開業資金に対して、十分な自己資金を用意することは非常に重要です。たとえば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では、自己資金は融資額の10%必要とされています。しかし、実際にはこの額では融資が困難な場合が多く、一般的には自己資金の目安として融資額の20%-30%程度を確保することを推奨されています。

また、自己資金とは、預金通帳や金融商品の証書などの公的な証拠書類で証明できる資金に限ります。証拠が提供できない手段での自己資金の調達は含まれません。自己資金を地道に築いていくプロセスが、公庫や金融機関からの信頼を築く重要な要素となるでしょう。

参考:日本政策金融公庫「月別収支計画書の記入例」

8)事業の見通し(月平均)

事業計画において、売上目標に加え、「従業員の増員」「店舗の拡大」など具体的な実現目標を設定することが効果的です。これに基づいて、売上、経費、利益の収支計画を詳細かつ具体的に立てることが重要です。なお、創業当初と1年後で計画を分けて作成することも推奨されます。

具体的な根拠を元にした収支計画は、創業計画書において非常に重要な項目です。収支計画書は、数字だけでなくその内容の健全性も非常に重要であり、計画どおりに行動することで利益を上げる可能性があるという、わかりやすい理解を持って立てることが必要です。

創業時には、理想と現実にかけ離れた計画を立ててしまう傾向があるため、その点にも留意する必要があります。また、リスクに対しても十分な配慮が必要です。想定されるリスクに対して具体的な解決策を計画に明記することが、事業成功の鍵となります。

「創業計画書の8項目のポイント」まとめ

創業計画書の作成は、事業の立ち上げと運営を成功させるための重要なステップです。

この計画は、潜在的な投資家や資金提供者に、事業の戦略、運営、財務目標などの詳細なアウトラインを提供する。計画の目的は、事業の詳細な説明を行い、事業の成功のために必要な資金を確保することであることを忘れてはなりません。

必要な要素を特定し、計画の目的を理解するために時間をかけることで、起業家は事業を長期的な成功に導く詳細で説得力のある事業立ち上げ計画を作成できます。

大阪府枚方市くずは「行政書士おおむら法務事務所」は、創業融資のサポートを行っています。

創業融資で必要な「創業計画書(事業計画書)」や「収支計算書」の作成や、トータル的なサポートなど、お客様のご希望にあわせた対応も可能です。

疑問点や困りごとなどありましたら「お問い合わせフォーム」より、お気軽にご連絡ください。

  • この記事を書いた人

特定行政書士×プロライター

ビジネス・法律系記事の執筆が得意な人。会社経営歴10年。
東証一部不動産・建設会社や中小企業、社労士事務所などで「法律系事務」や「人事総務」などを長年経験。

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